追い抜かせないぜ

欲と執着を捨てること、
たまに、そんなことを思い出しては、
いや、無理だって、
と、誰にともなくつぶやく日々、

欲と執着を捨てきれない修行の身であることを
改めて痛感させられるのが、
自転車で気持ちよく走っているときだ。

さっ、さっ、さっ、という音とともに
ぼくが気持ちよく走ってる横を
追い抜こうとする自転車がある。
そんなときは、
どうしても、
追い抜かせないぜ、
とペダルに力を込めてしまうんだよなあ、

相手も抜かすつもりで走ってきているから、
競争になって、
朝から自転車バトルになることが、
たまにある。
もう意地の張り合いだから、
後先考えずにペダルを力いっぱい漕ぐことになって、
ダメージが大きい。

体力的にももちろんだが、
精神的にも、
何やってんだよ、朝から、と落ち込んでしまう。

そんなときだ。

欲と執着を捨てなさい、

という優しい声が聞こえるのは。

ぼくは素直に、はい、と返事をして
修行に励むことを誓い、
再び、
ゆっくりとペダルを漕ぎ始めるのだった。

よかったらシェアしてね!
目次