では、お気をつけて

この季節、自転車で職場まで行くのが楽しい。
途中、鶴舞公園を通り抜け、
名工大の学生たちの間をすり抜け、
餅勘が開いていたら、鬼饅頭を二つ購入し、
それほどスピードを上げずに、
ゆっくりと走っていく。

風が気持ちいい。

そろそろ職場につく頃、

いい自転車ですね

いつの間にか、
ぼくの自転車の横に並んできた
自転車乗りのおじさんに声をかけられた。

これ、古い自転車なんです。
そのサドルがいい。ブルックスがいいですね。
あ、このサドルは最近のものです。
でも、いいですねえ。
後ろから見てて、いいなあ、かっこいいなあと思って。
あ、ありがとうございます。
そちらの自転車もなかなかいいですよ。

なんて会話をしながら、
しばらく、おじさん二人がゆっくりと並走していて、
じゃあ、ぼくはこっちの道へ行くんで、では、
と、ぼくが頭を下げると、
そのおじさん、
あ、では、お気をつけて
と挨拶を返してくれた。

お気をつけて、って
道端で、
さっき会ったばかりの
おじさんに言われることなんて、
そうそうない。

心残りは
ぼくもおじさんに対して、
そちらもお気をつけて、と返せなかったことだ。
それはぼくの至らなさもあるが、
やっぱり、別れの挨拶は苦手なんだよなあ、

どんなときでも、どんな人に対しても、
では、また、
とか、そんな感じになる。
多分もう二度と会えないと感じた友人に対しても
いつもと同じように、じゃあ、また、
と、うなずくにとどめる。

それは、まあ、性分だから、しょうがないんだよなあ。


よかったらシェアしてね!
目次