思い通りにならないことが楽しい   オンリーワン陶芸教室

息子が暇そうにしていたから、陶芸のロクロ体験に誘ってみた、、、
ロクロというのは、何となく自分の思い通りにならない楽しさがある、
本当なら、思い通りにならないことは悔しくて、悲しいことなんだけれども、
ロクロはなぜか、全然思い通りにならないことが、ゲラゲラと笑えてくるほど楽しい、、

めざすは愛知県瀬戸市、陶器の町である、、、

ロクロが体験できる陶芸教室は、いろいろあるけれども、
瀬戸の加山窯が運営しているオンリーワン陶芸教室は、
そのなかでも最も早く陶芸教室をはじめた老舗である、、、

ロクロを教えてくれるのは加山窯4代目の加藤盛久さん、
瀬戸染付焼伝統工芸士に認定されている方である、、
そう聞くとなんとなく頑固そうで怖そうなイメージがあるが、それがまったく逆で、
いやもうなんか心がとろけそうなほど優しい方なのであった、、、
まあ、それはおいおい説明していくとして、
それはともかくオンリーワン陶芸教室まで行かないと話にならない、、のだけれども、、、
道がわからない、、、

その日は雨が降っていて、オンリーワン陶芸教室までの道は下り坂になっていて足が滑りそうだった
入るとすぐに窯があって、盛久さんが素焼きをしていた

車のナビに従ってたどり着いたのは加山窯の工場で、どうもちょっと場所が違うようである、、
あ、そういえば加藤さんから事前に道順を知らせるメールが届いていたはずである、、、
それをしっかりと確認していなかったけれども、もう一度よく見ると、
写真を使って丁寧な道順が書かれてある、、これに従っていけばいいのか、、
最初からちゃんと確認しないとなあ、、、、
そうやって、なんとかたどり着いたのは、すごい竹林で覆われた場所だった、、
車を駐車して、ここで合っているのかという多少の不安を抱えながら歩いて道を下っていくと、
それらしき建物が見えてきた、、、

建物の中に入ると、一人の男性が窯詰め作業をしているところだった、、
あの、と声をかけると、、
お待ちしていました、どうぞ、どうぞ、ずっと奥に行ってください、、
この人が加藤盛久さんであることをあとで知った、、、
その言葉に従って、奥に進むと、作業スペースがあって、ロクロが数台置かれている、

ロクロをやる前にまずつくりたいもののイメージを頭に描くことが大切

スタッフの方がいろいろ説明をしてくれる、
サンプルの中から、どんなものをつくりたいのかをまず選んで、
その形をイメージしながらロクロをひく、、
加藤盛久さんが登場して、頭でイメージしていないとつくれませんから、と説明、
ああ、そういうもんなんですね、、、
だから、どんな形にしたいのか、じっくり選んでくださいね、、

今回は息子がロクロ体験をして、ぼくが撮影する(スマホでね)、、、

小さな男の子とお母さんと一緒に息子もロクロの前に座って、さて始めるぞ、という感じだが、、、ちょっと恐る恐る、、、

ちょうど同じ時間帯に、小さな男の子と若いお父さんお母さんの家族がロクロ体験をするというので、
息子も一緒にロクロの前に陣取った、、、
息子が選んだ形は背の高いカップである、、
ビールでも飲もうかなあ、と思って、と20歳になったばかりのくせに生意気なことを言う、

では、まず土の真ん中に親指をぐいっと突っ込んで、それから少しずつ広げていく、、、
あまり力は入れないように、、、
小さな男の子も一緒になって土に穴を開けようと必死になっている、、
力を入れない、力を入れない、、
加藤盛久さんが優しく諭すように声を掛ける、、
息子も同じように親指で穴を開け、それから土を広げる、、
しかし、なかなか土が広がらない、、、そのうち、ぐにゃぐにゃと変形してしまう、、、
すると、加藤盛久さんがやってきて、優しく諭す、、
だいじょうぶ、だいじょうぶ、、やさしく、力を入れない、、、
盛久さんがそっと手を添えると、また土はきれいな形へ戻っていく、まるで生き物のように、、
だいじょうぶ、だいじょうぶ、やさしく、やさしく、力を入れない、、、

なんだか楽しそうである
結構様になっているかなあ、、、

盛久さんは加山窯の4代目に当たる、
もともとはタイルや食器をつくっていた窯屋さんであるが、
問屋さんに言われるままに製品をつくることに疲れてしまって、、、
楽しく作品を創造するお手伝いをしていきたいという思いから、、陶芸教室を始めるようになった、、、
同時に、本焼成の前工程である素焼きをした製品を陶芸作家や窯元へ供給する仕事も始めるようになった、、
たとえば陶芸作家は、その素焼きの製品に染付と言われる下絵付けを施して、本焼成をして作品を完成させる、、、
ああ、そういうやり方もあるんだ、とちょっと驚いた、、、
素焼きという半製品をつくって供給している窯屋さんがあることもびっくりした、
まだまだ知らないことがたくさんあるものである、、

息子は時間をかけて背の高いカップをロクロでひいていた、、
まさに、ひく、という言い方が正しい、
盛久さんが少し手伝ってくれたのはもちろんだけれども、
ちょっと失敗してもまた元に戻してくれるという安心感からか、、、
最後のほうは結構いっぱしの陶芸家のような顔をしていた、、、
いや、でも顔はずっと笑っていたな、、、
思い通りにならない楽しさ、
息子のこんな笑顔を見たのは久しぶりだ、、

盛久さんのあたたかい人柄がちょっと伝わる動画
ロクロでひいたカップ、、ただ、ここから乾燥して、底を削って、釉薬をかけて、本焼成をして本当の完成となるが、それらはすべてお任せする、
ただ、釉薬はどんな色がい良いのかを事前に選んでおく、息子は黒色を選んでいた、、

オンリーワン陶芸教室はすごく人気があって、体験者がつくった器がずらりと並んでいた。完成品が家に届くまでには3~4ヶ月ほどかかる、、

だいじょうぶ、だいじょうぶ、やさしく、力を入れない、力を入れない、

盛久さんの柔らかく諭すような、その言葉の響きが耳に残っている、
もう一度、その言葉を聞くためだけに、ロクロ体験をやりに行きたいと思うくらいである、

だいじょうぶ、だいじょうぶ、やさしく、力を入れない、力を入れない、

息子と一緒にロクロ体験をしていた小さな男の子は、もともと力がないので、
むしろきれいな器をロクロでひくことができていた、、、
小さなお子さんのほうがうまくできることはよくあることです、
大人はどうしても力が入ってしまうから、、、と、盛久さん、、

盛久さんは陶芸作家としても活動をしている、染付の伝統工芸士としても認定をされているので、その技術は見ての通りである、
しかし、盛久さんのマスクを取った顔の写真を撮るのを忘れてしまった、、、あの笑顔を撮りたかった、、、

息子も20歳になって、小さな男の子ではなくなってしまったから、
たぶんいろんな力が入ってしまうんだろうなあ、、
でも久しぶりに沢山笑って楽しそうであった、、、

だいじょうぶ、だいじょうぶ、やさしく、力を入れない、力を入れない、

今も、その言葉がぼくの頭の中で響いている、

文・写真 小出朝生

🔸オンリーワン陶芸教室
営業時間 9時~17時 月曜定休日   TEL/FAX 0561-41-0135
(場所がちょっとわかりにくいので、連絡して行ったほうがいいです。そうすると丁寧に道順を教えてもらえます)

OFUSEで応援を送る

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてください

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次