毎日がハイクデイ その1

今年の2月まで運営していたカフェ&ギャラリーで、大野泰雄さんの個展を開催させてもらって、絵もオブジェも、なんかすごいなあと圧倒されてしまって、大野さんの友人の演奏会も開催、さらに句会もひらいて、ぼくも参加。そこで、大野さんに俳句の魅力を教えてもらった。で、大野さんの文章は絶対におもしろいはずと確信したので、「散文は苦手」という大野さんに、無理を言って、このシリーズのお願いをした。mayuzoさんは、謎の書道女子(?)で、こちらも試しに一度書いてみてくれませんか? と無理を言ってお願いをした。二人のコラボが、これからどんな響きを感じさせてくれるのか、すごく楽しみです。(小出)

 付ける薬の無いほどの釣り馬鹿を自認している。馬鹿は他にも三人居て、連んでの釣行を、もう三十年以上続けている。湾内に浮かぶ八畳ほどの筏に船で渡してもらい、一日を海の上で過ごすのだ。狙う獲物は黒鯛(チヌ)。一・五メートルの短竿の穂先に神経を集中させ、僅かに出る黒鯛の微妙なアタリを読み取り、瞬時に掛け合わす。ガツンと手応えがあれば大物だ。慎重に慎重にリールを巻く。心を落ち着かせる。やがて水面に姿を見せた銀鱗。三人の名人達の視線も一点に集中する。タモを用意する手が震える。しかし、ドラマはそこまで。覚えているのは、魚の尾が水面を叩く音と、同時に軽くなった竿の感触。
 やっちまった。三人の名人達の背中が、ニヤリと笑った。

🔸mayuzoさんから電話あり。間違えちゃった、、。「穴でありにけり」のところを「穴でなりにけり」と書いてしまった、と。ほとんどの人は気づかないと思うけど、ま、今回は、それも味ということで。

 私の女房は、ちょっとしたメモ魔。外出の際には必ずと言って良いほど台所の机の上にメモ書きが残される。多くは注意書や指示書のような内容で、ほぼ業務連絡。細かな文字がぎっしりと並ぶ。さぞかし神経質で几帳面な女と思われそうだが、さほどではなく、どちらかと言えば大雑把な部類に入るだろう。近頃では無くなったが、上着を裏返しに着て、私に指摘されるまで平気な顔をしているような、至って呑気な人だ。
 しかし私は、女房のその注意書のメモが気に入っている。明朝体のような細かな文字が整然と並ぶ書面を見ていると、クレーの抽象画のようで美しいと思う。クリップで束ねただけの、今では私の密かなコレクションとなっている。

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