倉井由紀子さん 紙縒(こより)ギャラリー会場にて
倉井由紀子さんはタイのチェンマイと名古屋の二拠点で活動する織物作家です。
1年の1/3をタイ、ラオスの地で過ごし、現地の織物を洋服やスカーフに仕立てて日本のギャラリーで展示、販売しています。
倉井さんのブランドStudio Bunrinの服は、美しい織柄を生かしたシンプルなデザインで、絹や綿の光沢や手触り、草木染の自然な色合いが印象的です。
東南アジアの織物を大胆に裁断し、センスのいい洋服に生まれ変わらせています。
倉井さんの展示会を心待ちにする固定客がたくさんいます。
倉井由紀子 旅する布 ~みんなちがっていい~ 展 より
会期:2024年10月10日(木)~10月20日(日)
会場:紙縒(こより)gallery(愛知県刈谷市半城土町西浦30)
倉井さんがはじめて東南アジアの布と出会ったのは今から26年前、観光で訪れたタイ、バンコクの骨董品屋でした。
北欧で織りを学んだ倉井さんにとって東南アジアの織物は新鮮で、手にした瞬間に「こんな織り方は今まで見たことがない、一体どこで織られたんだろう。」と思ったそうです。
店の主人に尋ねると「タイの東北部イサーン地方」で織られた布と教えてくれました。
そこはラオスとの国境に近いメコン川流域の田園地帯で、様々な民族が異なる織物を織って暮らしています。
倉井さんは日本へ帰ってからもその布のことが忘れられず、根気よく調べ続けました。
当時(1997、8年)は簡単に検索できる時代ではありませんでしたが、ついにチェンマイ大学で教鞭を取る「パトリシア」という英国人研究者にたどり着きました。
倉井さんはすぐパトリシアにメールを書いたそうです。すると思いがけず彼女から返事が来て、「イサーン地方の布に興味があるならチェンマイへ来なさい。織り子を紹介してあげるから。」と書いてあったそうです。
これがタイと倉井さんとのおつきあいの端緒となりました。
34歳の時の出来事でした。
織物との出会い
そもそも倉井さんが最初に織物と出会ったのは、26歳の時でした。
早稲田大学で社会学を学び、最初に就職したのはベビー家具を扱う会社でした。
仕事は順調でしたが、3~4年を過ぎる頃から「誰かが作ったものを売るのではなく、自分で作ったものを売りたい」と思うようになりました。
当時、社宅の近くに北欧の糸を扱う店がありました。
その店のご主人からタペストリー織り(つづれ織)の作家、望月祐記子さんを紹介してもらったのです。
初めて織物作品を目の当たりにした倉井さんは、自分も織りたいと思ったそうです。
その場で「習わせてもらえませんか」とお願いすると「教えることはできるけれど、織りを始めるなら海外からスタートしなさい。」と思いがけないことを言われました。
そして、スウェーデンのセテルグランタン手工芸学校の夏期講習は基礎から習えるからいいのではと薦めてくれたのです。
ちょうど会社に一区切りつけ、ヨーロッパを周遊しようとしていたところでした。
チケットの行き先を急遽スウェーデンのストックホルムに変更して、セテルグランタンのサマーコースに滑り込みで手続きしました。