別腹というより一つのお腹

別腹という言葉があるが、ほんとうに別にお腹があるのかどうか。
少なくとも、ももさんにとって、
甘いものは別腹という言い方には疑問が残る。

さんざん食べたあとでも、甘いものを見ると、
食べたくなるとか、食べる余地が生まれるというよりも、
さんざん食べたあとは、
むしろ、積極的に甘いものを欲するからだ。
これは別腹というよりも、一つのお腹と言った方がいい。

東片端の交差点の近くに、
名古屋に住んでいる人ならたいてい知っている
老舗の洋菓子・純喫茶「ボンボン」がある。
そのレトロな雰囲気によって、最近、人気が高まっている。
とくに純喫茶は、ときに行列ができていたりする。

でも、ももさんのお目当ては、洋菓子の方。
ボンボンのケーキは、少し小ぶりで、甘さが控えめ。
それだけでなく、やさしい味がする。
高級なケーキもいいけれども、
ももさんは、ボンボンの小ぶりでかわいいケーキが
やっぱり一番好きだった。

遅い時間に行くとあまり種類は残っていないから、
できるだけ早めに行くのがいい。
お気に入りは、渋皮モンブラン、ロイヤルチーズ、
スペシャルショート、コルネパイ、イチゴタルトなど、

家に持って帰って、
しばらくすると、
二つ、三つは、魔法のようにすぐになくなってしまう。
やっぱり別腹ではなくて、
一つのお腹なんだなと、
ももさんはくすっと笑いながら、
そう思った。

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