突板と出会い、突板と歩む エコウッズカンパニー

富永祐一さん 笑顔にやられてしまう

ぼんやりと、なんとなくネットで何かを検索していた、、
この近くで楽しそうなこととか、おもしろそうなものとか、なんか見つからないかな、、
そんな淡い期待を抱きながら頭に浮かぶ検索ワードを打ち込んだ、、
どういった経緯でエコウッズカンパニーがヒットしたのか忘れてしまったけれども、
名古屋市千種区、という場所にまず目がいった、、近いな、、
カラフルな色彩のアクセサリーの写真、それからマスキングテープ、犬や猫をかたどったワッペンのようなもの、
それらの素材は、木、らしい、、
たぶん、千種区で木を使った製品の企画製作、それと販売も行っているようだ、、
ただ、木といっても、普通の木とはちょっと違う、、、
それらは、なんか薄っぺらい木、木の皮のような感じのものを使った製品である、、
とりあえず、問い合わせのところから、ちょっとお話を聞かせていただきたいという内容のメールをした、、
数日後、返信があって、エコウッズカンパニーの富永祐一さんと会う約束を、、今池のデニーズで、、、
いつもの雑談のはじまり、、ぼくの知らない世界との出会いである、、、(文・写真 小出朝生)

はじまりは合板

ーー富永さんはもともと木材関係の仕事をしていたんですか?

富永 名古屋は全国的にも有名な木材産業が盛んな地域で、名古屋の隣りの飛島村には木材関連の会社が何社もあって、、わたしは大学を卒業してから、そのうちのひとつ、合板を製造販売していた会社に入社しました。
もともとは名古屋の堀川沿いの材木屋さんが、合板とか、木材の加工品をする工場を飛島につくったんですが、わたしが入社したのもそんな会社の一つでした。

ーーそうだったんですね。ぼくが小さい頃の堀川には丸太がたくさん浮かんでいて、その丸太の上を移動するオジサンの姿をよく見たものです。

富永 堀川沿いには今も製材の会社がいくつか残っていますが、昔は堀川にいっぱい丸太が浮かんでましたね。わたしも堀川に浮かぶ丸太の上で作業をしたことがありますよ。

ーーじゃあ、ぼくが見たおじさんの一人だったかもしれない、、、

富永 ただ、合板産業は、わたしが入社した昭和50年前後にはすでに斜陽産業でした。
当時、日本でつくるよりも材のあるインドネシアでつくったほうがいいということで、インドネシアに工場をつくって、先輩たちは日本から技術指導に行っていました。
インドネシアでどんどん合板をつくるから値段が下がり、もはや日本国内でつくっていては儲からない状態になっていました。

そんな状態ですから、入社10年くらいで嫌になってしまって退職、その1年後くらいに勤めていた会社の飛島の工場は閉鎖、、今では、飛島には合板の工場はなくなってしまいました、、、
全国的にみると、現在、木材の需要は減少傾向にあります。そのうち、合板の需要は昭和40年の終わりころをピークに徐々に下がっていっています、、ただ、かつてはインドネシアやフィリピンなどの材料を使って、それら現地で製造した合板の輸入がほとんどでしたが、今は、少しずつ国産材を使った国産の合板も増えているようですね。

つきいた
マスキングテープ

突板と突板でつくったマスキングテープ。いろいろな使い方ができそうだ、、

ーーちょっとすいません、基本的なことをお聞きしたいんですが、合板って、どんな木なんですか?

富永 合板は、丸太を大根のかつらむきのように薄くスライスした板を接着剤で貼り合わせた板のことですね。
(丸太を回転させながら薄く切る機械を発明したのが名古屋の浅野吉次郎という人で、明治40年のこと。日本で合板の製造が本格的に始まったのはこの発明をきっかけなんだって)

ーーホームセンターによく売っている板ですね。

富永 そうです。

ーーで、その後、富永さんはどうされたんですか?

富永 いったん木材業界を離れて、商社の営業として働きました。それまでは製造部門だったんですが、そのとき、はじめて営業とか商品企画といったことを経験しました。それから、40才を過ぎたころ、昔の先輩に請われて木材業界に戻ったんです。それが今、私が扱っている突板(つきいた)の会社だったんです。

そもそも突板って?

富永さんの自宅は今池のデニーズの近くで、この辺りはいつも犬の散歩をしているところだという

ーー突板って、たぶん、聞いたことがない人がたくさんいると思います。

富永 丸太をかつらむきした薄い板を張り合わせたのが合板ですが、突板は、丸太をさらに薄く1ミリ以下にスライスした板です。それを家具やドアの表面、フローリング、テーブルの縁などに貼ったりして使うわけです。ようするに表面の化粧ですね。

ーーああ、なんとなくわかります。たとえば、合板などの上からひのきの突板を貼ると、無垢の天然木のような雰囲気になるということですね。

富永 わたしが勤めていた会社は、突板をつなぎ合わせて、ロール状の100メートルとか、連続して貼れるように使いやすくした突板をつくっていました。それが大ヒットして、大手ハウスメーカーなどに納入していました。

ーーイメージとしてはテープのように連続して貼ることができるという感じでしょうか、、、

富永 ただ、その後、樹脂を浸透させた紙のメラミンのシートが出てきて、印刷技術が進化すると本物の木と見分けがつかないようになってきたんです。そうなると、本物の木である突板をわざわざ使う必要がなくなってしまって、、、メラミンシートの方が強度も耐久性もあって、扱いやすいですからね。しかも値段が安い。
よっぽど凝ったホテルの内装とかには突板が使われますが、一般家庭はほとんどメラミンシートに変わってしまった、、、

ーー似たようなことは、どの業界でもありそうな、そんな気がします、、

富永 かつて、ドアの表面はすべて突板が使われていたんですが、最近ではほぼメラミンのシートに変わってしまって、、、ようするに、突板の市場がほとんどなくなってしまった感じです、、
だから、新しい用途を見つけないと、本当に突板がなくなってしまうと思って、、

突板を使った商品を企画し販売

ーーあ、それで、エコウッズカンパニーにつながっていくわけですか、、

富永 最初は、仕事の合間に、その頃飼っていたゴールデンレトリバーを型抜きして、お客さんにあげたりしていたんですけど、、
突板の裏はテープになっていて、いろんなところに貼れるようになっていたんです。
でも、これって、本業としてやるようなことじゃないんですよね、、
だから、会社に了解を取って、別会社としてやり出したんです、、副業ですね、、、

突板のシールが貼ってある富永さんの携帯と名刺入れ、ちょっと使い込んだ感じ、、、

ーーなるほど、犬の突板シールづくりからスタートしたんですね、、

富永 そうです。ただ、犬の場合、犬種にこだわる方がほとんどなので、今度は猫をつくるようになって、、、猫の場合は、種類は気にしないんですよね、、、
そんなことをしていると、こんなことできないかといろいろ頼まれるようになって、、、

ーー犬や猫のシールはどうやってつくるんですか?

富永 100メートル巻きの突板ロールをトムソンの型で抜くんです。紙箱とか段ボールと同じ要領ですね。要するに、シール屋さんのような感じです。
たとえば、50メートルの突板ロールだと犬のシールが1000枚できます、、
わたしとしては、それで利益を出すことよりも、いろんな人に木に親しんでもらいたいと、、
お客さんに、これ貼ってねと配っていれば、、今は誰も突板について知らないけど、ちょっとは知ってもらえるかな、、PRになるかな、、と思って、、

ーーホームページを見ると、そのほかにも、突板でいろんなものをつくっていますね、、

富永 もう少し目新しいものがないかなといろいろ考えて、マスキングテープをつくってみたりしました。
それと寄木細工を使ったもの。あれはギターなどの楽器パーツをつくっている大和マークという会社があって、そこが突板を使って寄木細工のパーツをつくっていて、そこの技術を活用してコンパクトミラーや手鏡などをつくりました。
それは、名古屋商工会議所が取り組むプロジェクト『名古屋匠土産(なごやたくみやげ)』に認定されました、、
大和マークは世界中の楽器メーカーにパーツを供給していて、楽器業界で知らない人はいないと思います、ギブソンなど有名楽器メーカーも使っています、、

フォトフレーム

突板はきれいな木目があって触っても優しい感触がある。突板を使ったフォトフレームと栞

寄木細工のアクセサリーも

ーーへえ、そんな会社が名古屋にあるんですね、、、ぼくも楽器メーカーはいろいろ取材してきているんですけど、、、鈴木バイオリン、ヤイリギター、星野楽器のドラム工場、あと個人でエレキギターをつくている人とか、、、、

富永 あと、ウクレレとかもありますね。

ーー名古屋でウクレレをつくっているところを知ってますか?

富永 たぶんあると思います、ちょっと具体的には知らないんですけど、、、、名古屋は鈴木バイオリンがあって、そこの職人だった人が独立して楽器をつくるようになっているケースが多いですね、、

ーーああ、やっぱりそうですよね、鈴木バイオリンの存在が大きいですね、、、、
エコウッズカンパニーで寄木細工のアクセサリーもつくっていますね、あれも素敵です、、、

アクセサリー

突板の寄せ木細工のアクセサリー。すごくきれい

富永 突板で寄木細工をつくると端材が出るので、その端材を使って娘がアクセサリー作家として活動しているんです。展示会とかデパートで販売しています。

ーー娘さんなんですね、、じゃあ、今度娘さんにも話を聞こうかな、、、、

富永 愛知県産材の名刺がほしいと依頼をされて、山林がある豊田市のヒノキを使って名刺をつくったこともあります、、愛知県にもこんないい木があるんだよというPRのために、、、
また、名鉄電車に愛知県の木のPR広告をつくったり、、、、
それから突板を使った栞もつくりました、、、
70才までは 突板の営業の委託も受けていました、、沖縄から北海道まで飛び回りました、、、70歳を機にそれらの営業委託はやめましたが、、

アクセサリー

寄木細工のアクセサリーも人気のようだ、、

ーー製品は主にどこでつくっているんですか、、

富永 それぞれのメーカーに依頼してつくってもらうんですが、たとえば梱包とかセット組なんかは自宅のリビングの一角で、わたしがやっています、、
いま、一番売れているのはマスキングテープで、全部6種類あります、、
販売はホームページが中心で、あとは展示会とかにたまに出しています。
これからは孫の世話と犬の世話とエコウッズカンパニーの仕事がわたしのやらないといけないことですね、、、

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🔸エコウッズカンパニー
名古屋市千種区桐林町2-27

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