ボケーっと一服

ぼくは自転車通勤するときには、
株の優待券で暮らす桐谷さんのように
高速でペダルを回転させるように意識している。
もちろん、桐谷さんレベルに達してないけど、
もはや意識は桐谷さんと同化している。

そんなふうに、シャカリキになって
坂を登っているとき、
ぜい、ぜい、はあ、はあ、
もうだめだ、ぜい、ぜい、はあ、はあ、
死にそうにペダルを踏み込んでいる
ぼくの前方に、
ゆらーりと煙が上がっているのが見えた。

なんだ、あの煙は?

ぜい、ぜい、はあ、はあ
なんだよ、あれ、
近づいて電信棒の向こう側に見えたのは、
おじさんが、
気持ちよさそうに、
ぷはー、っと煙草をやっている姿だった。

いいな、おじさん、
一服、かあ

今はタバコを吸う人が激減してしまったし、
吸う場所も限られているというか、
閉じ込められているというか、
そんな感じだから、
リラックスして煙草をやってる姿を
あまり見なくなってしまった、

ボーっとしながら
煙草をふかしている男の姿は
なかなかいいと思うんだけど、、、

でも、今は、
女子中学生がスラックスで登校する時代だから、
男が、ボッーっとして煙草をやるなんて、
ちょっと、
時代の雰囲気に似合わないのかもしれないなあ、、

でも、いいよ、おじさんは、
煙草くらい一服したって、
ボケーっとする時間くらいないと、
やってらんないよなあ、、

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