朝、
その男はまっすぐ前を向いて道に座っていた。
パイプ椅子に座っているその姿は、
男が礼儀正しい人間であることを示していた。
青空のしたで、
日をいっぱいにあびていた。
でも、その男は、
キャップを深くかぶり、
むしろ、日差しを避けるようなそぶりを見せていた。
気温は、
これから午後にかけて、
ぐんぐんと上昇していくと予想されていた。
今日は、最高の日だ。
洗濯ものを干すなら、
こういう日が気持ちいい。
でも、男にとっては、
そうではないようだ。
その男は、大切なものを守ろうとしている、
そのために、
今は耐えるときだ考えているような、
そんな顔をしていた。
その男の、半袖から出ている二の腕は
黒く日焼けをしている、
腕の先端の掌でしっかりと長い棒を握っている。
力を入れていることが
二の腕の筋肉の盛り上がりから
よくわかった。
男が握っている棒の上のほうには
なにか文字が書かれた薄い木の板が
旗のように取り付けられていた。
でも、布じゃないので、はためいてはいない、
その板には、大きな文字で
「分譲」と書かれていて、
矢印がその文字の下に描かれていた、
しかし、矢印の方角を見ても、
「分譲」らしきものは、見当たらない、、、
心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは、目に見えないんだよ
そんな星の王子さまの声が聞こえたようで、
ぼくは青い空を見上げた、
男は礼儀正しい姿勢で、
ずっと、
まっすぐ前を見ていた、