白髪の老婆とガリガリ君ソーダ

コンビニでカップのカフェラテを買ってレジに並び、
ぼくの番が来たので、お金を払おうとしたとき、
ぼくの背中を押すように白髪の老婆が割り込んできて、、、

ちょっとどいて、
そう言いながら、ガリガリ君ソーダが7本入った箱を3つ、
レジにポンと投げ出して、
はよ、やって、とけちゃう、はよ、

いや、いま、ぼくの番なんだけど、、

結局、ぼくはレジの隅のほうで清算を済ませることになったのだが、
白髪の老婆は、ガリガリ君ソーダの箱をビリビリと破って、
ゴミとなった紙の箱をレジのスタッフに放り投げ、
ガリガリ君ソーダを透明の袋に詰め替えだした、、、

さらに、
はよ、計算して、いくら?
と言いながら、財布から小銭をバラバラとまたも放り投げた、
レジのインド系の女性スタッフはぼくの方を向いて、
ごめんなさい、という感じで苦笑いをする、
おそらく、厄介な常連として、スタッフの間では認知されているに違いなかった、

ぼくは腹が立つよりも、
あまりにも、あまりにもなその態度に
むしろ感心してしまった、、
何なんだこの老婆は?

321円足りません、
レジのインド系の女性スタッフがそう伝えると、
ああ?と絡むように言いながら、
500円硬貨をポンとまたも放り投げた、
とにかく、この老婆は何でもかんでも放り投げるのだった、
ぼくはずっとその様子を眺めていた、、、

清算が済むと、
白髪の老婆は、はい、どうも、と吐き捨てて、
去っていったのだが、
驚いたのは、そのあとだ、

コンビニの前の広い道路の信号は赤なのに、
白髪の老婆は、そんなの関係ない、という感じで、
道路を渡り始めたのである、
さすがに危ないと思ったが、たぶん、誰も止めることなんてできない、
車も老婆を避けるように通過していく、
広い道路の半分くらいまで、老婆がよろよろと歩いてところで
信号が青に変わった、、、

ぼくは白髪の老婆の後ろ姿を眺めながら、
あの老婆はどんな暮らしをしているのだろうか、と考えた、
そのときの時間は、午後9時くらいだった、
こんな時間に、コンビニまで一人でガリガリ君ソーダを買いに来る、
しかも、合計21本も、、、

さらに、ぼくは、あの老婆の若い頃も想像してみた、
20歳代の頃、
おそらく日本の高度成長期だと思う、
もしかすると、近くの陶器メーカーで事務員なんかをしていたかもしれない、
結婚して、いろいろあったんだろうなあ、、、
それとも、もともとの性格?
いや、それはないと思う、

何が彼女をあんな感じにさせたのか?

ぼくは夜の空を見上げながら、考えに沈んでいった、、

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