ジャパンスタイルフレグランスという会社の代表の大野智恵美さんは、フレグランスコーディネーターといって、香りをつくる人である、、20年ほど前に初めてお会いして、その後、ごぶさたをしており、一昨年、偶然、再会を果たした、、そのとき、20年以上にわたって香りの仕事を続けられてきたことへの尊敬とともに、外見があまり変わっていないことに驚いた、、、大野さん、若いなあ、、調香の教室開催や、いろんな依頼に応じてオリジナルの香りをつくる仕事を続けている大野さんと、今回はゆったりと雑談してきた、、、
文・写真 小出朝生
香りは誰かがつくっている
ーーこのあたりは住みやすそうですね、、
大野 とても住みやすいです、便利ですし、名古屋駅までも近いですから、
最近は、圧倒的にワンルームマンションが増えました、名古屋駅から近いということもあって単身赴任の方が増えたからでしょう、それに伴ってドラッグストアが増えたりして、より便利になりました、
ーー今日は雑談をしに来ました、、、
大野 じゃあ、気楽な感じで話せばいいですね、、、
世の中のものはすべて、誰かが、どこかで、つくったものなんですが、、、、最近、それに関して気づいたことがありまして、、、
先日、友人のバレエの舞台を見に行ったんです、、演目がジゼルで、私子供の頃からジゼルが好きだったんで喜んで行ったんですが、、、、
これまで、、舞台衣装は魔法のようにぽんと勝手にできていると思っていたんです、、
でも、この衣装はこういう人がつくっています、とインスタに上がっていて、、、
そうだよねえ、誰かがつくっているんだよねえ、と気づきまして、、、、
世の中にあるものはすべて誰かがつくっていると、改めて思いました、、、
ーー大野さんにはじめて会ったのは今から20年ほど前で、それまで香りのことなんて考えたこともなくて、
香りもつくっている人がいるんだと教えられました、、、
そのとき、世の中にあるものはすべて誰かがつくっているんだなと、ぼくも思いました、、、
20年間で香りに対する世の中の意識はだいぶ変わりましたか?
大野 変わりましたね。とくにここ数年が変わりました。約20年前、私が香りを仕事にしようと思ったくらいだから、需要がなくはないものだし、歯磨き粉はどうしてミントの香りがするのか、みたいな話じゃないですか、、
香りのない商品って、実際にはないんですよね、、このお茶だって、香りがあります、、、
世の中にある香りって、ほぼ誰かがつくってるんです、、、自然の花の香りとか、そういうもの以外は、、、
最近は、花の香りだって、ハイブリットもあるし、品種改良もあるし、人が香りをコントロールしているんですよ、、、
ーーあ、コンロールされてるんだ、、、
大野 一番わかりやすいのがフレーバー、食品用香料かな、、これ、何のために入ってるかっていうと食品の香りを増強させて、より美味しく感じさせるために香料が入ってるんですけど、注目はされないですよね、、、クリームシチューのルーを使うと、大して牛乳入れてないのにすごくミルクリッチな香りになるでしょ、、、みんな香料です、、
ーー食べるものには、人工的な香料は入っていないほうがいい、という人も多いんじゃないでしょうか、、香料のまったく入っていない食品って、あるんでしょうか?
大野 市販の食品では難しいでしょうね、ただ、そういうことに敏感でこだわって選べば、できなくはないと思います、
でも、香りを増強させるスパイスミックスは自然なものですし、
香りというと、、、どちらかと言えば人工的なイメージがあるけど、それだから悪いって訳じゃないと思いますよ、、
ーーうん、うん、、
大野 例えば、天然のもので、すでに枯渇しているものもあるわけですよ、、白檀なんてそうなんですけどね、だったら、それは合成でもいいじゃないかって、私は思っている、、それはなぜかっていうと、香りって有機化合物の集まりだから、その化学式でつくれるわけなんですよ、その人工の香りで、いい気分になれば、その人にとってプラスだろうと思うんだけど、それは認められないと考える方がいることも理解はしていますが、、、

西洋と出会い、香りが変化
ーーぼくは香りに無頓着というか、そういう人間なんですが、今の男性は普通に香水とかつけるじゃないですか、、
大野 香水どころじゃなくて、普通にメイクしてますよね、この前、ガラス張りのスタバで、男の子がまつ毛をビューラーでキューってやってました、、、
ーー僕のまわりにいる男性で香水付けるなんて、ちょっとあり得ないんですよ、そういう環境で育ってきているので、、、だから人によって香りに対する感覚がだいぶ違うでしょうね、、
大野 今の若い男性にとって、香水は服を着るのと一緒だと思うんですよ、服を選ぶ時に、柄ものが好きな人もあれば、無地のものが好きな人もいる、、、また、、華やかに見せたいから、これを着るとか、今日はスポーティーな場所だから、これにするとかそういう感じと一緒で、香水をつけるんだと思います、香水をつけることに関して、性別の差はあまりないですね、、外見を整えるということですから、、、
ーーあの、最近は特にそうですよね、、ぼくはわからないですけど、、、
大野 香水は印象をどうするかって話ですね、明るい印象にするとか、華やかに見せたいとか、、、
もともと男性用の香水ってワイルドに見せたいとか、ちょっと遊んでるように感じさせたいとか、清潔感があるようにとか、、ま、そういうことだと思うんですよ、だからやっぱり服装とつながってると思います、、
ーー歴史的にみても、みんな、香りを生活の中で楽しんてきたんですよね、きっと、、、
大野 香を焚くというと、奈良時代もあったし、平安時代ではオリジナルブレンドをして楽しんでました、、源氏物語でも、お香のオリジナルブレンドをしたり、香りを楽しんでいる描写が出てきます、、、
ただ、日本のお香の素材は、舶来品が多いですね、
和の香りと思われているもの、たとえば麝香(じゃこう)はヒマラヤ、ネパールの山奥にいるジャコウジカの分泌物ですし、、、伽羅(きゃら)はベトナムあたりですよ、白檀(びゃくだん)はインドやインドネシアですよね、、、織田信長が広めたと言われる蘭奢待(らんじゃたい)も海を渡ってきたものです、、、
ーーへえ、不思議ですね、そうなんだ、、、
大野 もともそこまで香りの強い素材が日本の中には少ないのかもしれないですね、、
木の香りとか、貝殻のお香とか、そういうものもあるんですが、昔から珍重されていて、漢字の名前が付いている香りの素材で国産のものは少ないです、、、

ーー昔は、香りを見つけてくるというよりは、近くにある自然の香りを感じるというのがほとんどだったというのは、よくわかるんですが、、貴族階級とか武士とかが珍しい香りを見つけてくるんでしょうね、、
江戸時代には一般庶民も香りを楽しんでたみたいですけど、、、
やっぱり昔から、その時の気分に合った香りを探していたのかもしれないですね、、
大野 明治時代になって西洋と出会うことで、、香りは大きく変化してきました、、、西洋の香水というのが日本に入ってきて、、、ただ、明治、大正時代は一部の人たちに限られていて、、、大衆に広がったのは昭和 50年代ぐらいではないかなあ、、、バブルの前ぐらいにディオール「プアゾン」っていう香水がすごく流行ったんです、、でも、それを発売した当時、ディオール社が「日本人女性が香水を日常的に使うには、あと10年はかかるだろう」って言っていたんです、、、
バブル期になっちゃったら、服装が一気に派手になって、出かける機会が増え、ワンレン、ボディコン、ヒールですよね、、あの格好に無臭って、、なんかね。ちょっと頼りないんです、、、物足りない、
で、香水を使うようになって、そうなると嗜好品ってやめられないじゃないですか、、、で、日常的になった、、
ーーなるほど、、、バブルの頃は二十代だったけ、、、でも、まだ男性は香水を使ってなかったですね、、、
大野 うーん、その頃、男性用の香りというと、、、 MG5ってわかります?
それは、日本の中では香りのする男性用化粧品の代表だったんじゃないかなあ、、、
そのころ、そんなに男性用香水のメーカーもなかったんで、、、それこそシャネルでエゴイストとか、、
その頃の男性用香水は、男らしさをアピールするんですよね、、 MGファイブもちょっと男くさい感じ、、
シャネルのエゴイストのテレビCM、日本では流れてないですけど、、、大きめのお家から男の人が出てくると、
パーンって窓が開いて、女の人がエゴイストって叫ぶんですよ、、で、また違う窓がパーンって開いて、エゴイストって叫ぶ、、そうやって窓がいっぱい開いて、エゴイストって馬声を浴びるんですけど、俺ってこんなにモテちゃうんだぜってことですよね、、
ーーなるほど、今聞くと相当ダサいですけど、、、
大野 今は男性と女性の差がなくなってきているので、、あんまり男性っぽいのが流行ってないですね、、、
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