澤田酒造の梅酒づくり

麹室が焼けたときはやめようと思った

――大きな釜ですね、、

澤田 酒づくりは、まず、この大きな和釜の上に大きなせいろ、木製の甑(こしき)を乗せて、お米を蒸し上げます、、、、焚くのではなく蒸すんです、、、木甑といいます、、
いま、全国に酒蔵は1000軒以上ありますが、この木製の甑を使っているところは5軒あるかないか、
もうこの木の甑がないんですよね、、、最後につくってくれた会社も、もう廃業されるんで、、、

大きな和釜、、この上でお米を蒸す、、
木の甑、、これをつくるところがないという、、、

――木桶のつくり手がいないという話はよく聞きます、、

澤田 桶と甑はまた違うんです、、、
見た目は全く同じなんですけど、液体を貯蔵するものと、蒸し上げて蒸気があたるものという違いがあって、、、甑の場合、やっぱり木が持たないんです、、それだけタフな使い方をするんで、、、だから、木材もこだわらないといけなかったりするんで、普通の桶とは全然、設計が違うんです、、、
甑の材質は杉なんですが、すべて柾目で節がない、
本当は 15年使ったら新しいものに取り換えといわれているんですが、
この甑はもう30年近く使っています、メンテナンスしながら、、、

――なくなると大変ですね。

澤田 なくなったら、まあ現代的な道具でやればいいんですけど、、、
やっぱり難点があって、このあたりは、海のすぐ近くなんで、湿度がすごい高いんです、、で、お米を蒸して、外に出しておくと、結露が起きて、べちゃべちゃになっちゃうんです、、そうなるといいお酒ができないんです、、、

木の甑のいいところは、保湿性が非常に高い、、、余分な水分を木がすってくれるので、質の高い蒸米ができるんです、、なので、ちょっと時間かけても全然大丈夫、それがステンレス製の場合、もっと時間にシビアになって回していかなきゃいけなくなるので、、、工程が全部が変わってきてしまう、、、

――なるほど

澤田 日本酒はすべて減点法で物事を考えていくんです、
たとえば、木の匂いが付いてしまったら減点になります、、、
一方、ワインは加点で良い所をこう伸ばしていくタイプなんですね、、
日本酒は、まあ、平等で、 100円の紙パックのお酒も、10000円のお酒も、みんな 100点からスタートして、
こういう香りがあるからマイナス、あ、ちょっと旨味がありすぎるからマイナス、、、
バランスがすべてで、ある意味、大胆なことをするとだめになっていくんです、、
だから、木を使っている時点で、実はもうすでにマイナスになるんです、、
なので、みんなステンレスに置き換えるんです、でも、やっぱり木じゃないと、無理なことってあるんですよね、、、

ここだけ新しい麹室、、日本酒づくりの心臓部である、、
ここからもう一度立ち上がろうと決意した場所である、、

(麹室の前で)

澤田 私達、2020年に火事になって、酒造りの心臓部・麹室が全焼しました、、

――ネットニュースで見ました、、

澤田 あのときは、ぼくはもうやめた方がいいと思いました、、

――えー 、あ、そうなんですか、、

澤田 私は婿養子なんですが、仮に、また借金を背負って立て直したとしても、将来、なんでこんなの残したんだろうと思われるような気がして、これはもう無理だなって、やめた方がいいと思ったんです、、
でも、その日のうちに、いろんなところら電話がかかってきて、何か手伝うよーと言ってくださって、、、日本酒の業界って、蔵が1軒なくなって喜ぶような業界じゃないんだなあと改めて感じて、まあ、もうちょっと頑張ってみようかなって、、、

――やっぱり、まわりの求めてる声って力になりますね

澤田 はい、それがないとできないです、るみ子さん(三重県伊賀市の森喜酒造の専務、「るみ子の酒」で知られる)も火事の次の日に来てくれて、、、
酒蔵にとって、、麹室は心臓の部分ですね、、言ってみれば心筋梗塞になったようなものです、、他のところが元気でも、心臓がだめならもう死ぬしかないですね、、だから、新しいこの麹室ができるまでは、るみ子さんのところで麹をつくってもらって、血がまわり始めて、そして今があるんです、、、

――そうだったんですか、、なんか感動します、、

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