ぼくの前に白の軽自動車が走っている。
運転しているのは、白髪のおじいちゃんのようだ。
助手席にも、同年代のおじいちゃんが座り、
後部座席にも、もうひとり、おじいちゃんが座っていた。
その軽自動車は、時々スピードを緩めて、
運転しているおじいちゃんが、どこかを指さし、
あとの二人がうなづいている、
車がすれ違うのに苦労するほどの狭い道だったので、
追い抜くことはできない、
ぼくは、なんだ? どうしたんだ? と思いながら、
おじいちゃん、ちゃんと運転してくれよ、と
ひとりつぶやいた、
3人のおじいちゃんを乗せた軽自動車は
ゆっくりと進む、
時々停まりそうになり、
3人で横を向いて何かを眺めている、
それから、うん、うん、とうなづき合っている、
ぼくは、おいおい、と少し苛立ったけれども、
なんか、3人のおじいちゃんが、
仲良く軽自動車に乗っている姿が、
急にかわいく見えてきて、
しだいに、なんか、いいなあと思うようになった、
あれくらいの年齢になって、
同年代と一緒に軽自動車に乗って、
何かを眺めているのか、探しているのか、、
とにかく、一緒にうなづき合って、
コトコトと出かけていくというのは、
最高じゃないか、
ぼくも将来、あんな感じに暮らしていけたらいいなあ、、、
おじいちゃんの理想の姿を思い浮かべるとき、
いつも頭に浮かんでくるのが、三浦敬三というひとだ、
冒険家・三浦雄一郎の父親で、
99歳でモンブラン大滑降を達成し、
101歳で亡くなるまでおよそ80年間スキー一筋に歩み、
指導者としてスキーの楽しさを伝えたひとだ、
いくつになっても、挑戦を続けたその生き方が
すごくいい
軽自動車に乗った3人のおじいちゃんと
三浦敬三さん、
ぼくのめざすおじいちゃん像は、
それらが合体した感じのものだ、
軽自動車のおじいちゃんのように暮らし、
三浦敬三さんのように生きる、
いいなあ、
それがいい、