将棋の子どもたち

愛知県瀬戸市出身の棋士である藤井聡太さんの活躍は
すごくわくわくする。
なぜかわからないけど、ぼくは昔から将棋放送をよくみていた。
まったく自分で将棋を指さないくせに、、、
盤面をはさんで戦っている二人の姿が、かなり本気なのがわかって、
なんか、胸にグッとくるものがあったんだよなあ、、、

つい先月、作家の大崎善生さんが亡くなった。
「将棋マガジン」の編集者から作家へ転身し、「聖の青春」でデビュー。
これは羽生善治さんのライバルとして戦いを繰り広げながらも、
志半ばで急逝した村山聖(さとし)さんの生涯を描いたものだ。
そのあと、プロ棋士への登竜門である奨励会の戦いで
敗れ去っていった者たちを描いたノンフィクション「将棋の子」を発表。

この「将棋の子」は、ぼくにとって、
もっとも泣ける本である。
今思い出しても目頭が熱くなる。
なんだよ、と泣きながら読んだものだ、、、

たぶん、ぼくは敗れ去っていく者たちに、弱いんだと思う、
地方で将棋の天才と呼ばれた男たちが集まってくる奨励会、
それまで自分より将棋が強いやつなんていないと思っていたのに、
奨励会では、まったく秀でていないことを思い知らされる、、
それを思い知らさせたときの愕然とした思い、

26歳までに将棋を勝ち抜いて四段へと昇格できたかった者は、
強制的に奨励会を退会させられてしまう、、
それまで将棋しかしてこなかった者が、いきなり社会へと放り出されるわけである、
こんな厳しい世界があるだろうか、、、

「将棋の子」では、結局、四段に昇格できずに、
奨励会を退会した成田さんを追いかける、
家族の不幸にも見舞われながら、
ゴミ収集車の作業員として働く成田さん、
それでも、将棋に出会えたこと、将棋が強かった自分であったこと、
それが今も生きる支えになっていることについて話す成田さんの言葉は、
涙なくしては読めない、、、

藤井聡太さんは、そんな世界を一直線に勝ち抜いて
中学生でプロ棋士となり、
さらに、一直線に将棋の頂点へと駆け上がっていった、、
その背後には、たくさんの成田さんがいる、、

大崎善生さんは、その後、恋愛小説などを書くようになっていくのだが、
ぼくにはそれが意外な感じがした、
あ、そっちへ行くんだ、、、、そんな感じかなあ、、
もう一度、敗れ去っていく人たちの姿を描く大崎さんが見たかった、、、
ただ悲惨なだけでなく、
ほんのりとした明るさのある文体が、
もう一度読みたかった、、

よかったらシェアしてね!
目次