ぜんざいを求めてサイクリング

正月三が日はずっとサイクリングに出かけていた、
三日間とも晴れて、暖かかくて、すがすがしい気候だった、
ぼくは、ずっと、どこかでぜんざいが食べたいなあ、と思っていた、、
しかし、なかなか見つけることはできなかった、、
大須でも行くかあ、そうすれば、どこかでぜんざいを出している店はあるだろう、、、

そう思って、ちらっと大須に寄ってみたが、
アーケードの下の道を人が埋め尽くしていて、
とてもじゃないが、ぶらつく気分になれなかった、、、

しょうがないので再びサドルの上の人となって、
ぶらぶらと名古屋の街を走った、

御器所のあたりで和菓子屋「一太郎」というお店がやっていたので、
ぜんざいはあきらめて、ま、まんじゅうでいいか、と扉を開けた、
そしたら、推定80歳後半の小さなおじいさんとおばあさんが出てきて、
いらっしゃい、と、、、、
えっと、栗羊かんとイチゴが上に乗ったおまんじゅうと、草餅と、あ、それと、このお餅も、、と言うと、
小さなおばあさんが、これでいいかな、と聞いてきたから、
はい、と返答、
それから小さなおじいさんが、背を向けて、ゆっくりと計算をはじめた、

小さなおばあさんは、ぼくが買ったものを袋に入れてくれて、
それを渡す途中に、キンツバをその袋の中にそっと入れて、
ぼくの方をちょっと見てから、
口に人差し指を当てて、しー、っと肩をすくめて笑った、
なんか、おまけをしてくれたみたいだ、
その仕草がすごく可愛かったんだよなあ、、、

でも、初めての店で、常連でもないのに、
なんでおまけしてくれたんだろう、、、
まあ、正月だからかな、

なんか、あたたかい気持ちになりながら、
再びサドルの上の人となって、
ふらっと走っていると、
御器所の交差点にある「ポン」という喫茶店の看板に
ぜんざい、の文字が、、、

あ、と声を上げたぼくは自転車をとめ、扉を開いた、

店内は昭和感が漂う雰囲気、
ぼくは奥のボックス席に座って、ぜ、ぜんざいを、と注文した、
出てきたのは、ヨモギ餅が二つ入ったシンプルなぜんざい、
一口すすって、
この甘さに、やられてしまった、
これこれ、その甘さが欲しかったんだよ、と一人静かにうなづく、

それから、ぼくは、
しばらくの間、
なんていい正月なんだ、と満足していたのだった、

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