30代はじめのころ、陶芸作家の個展によく足を運んで、気に入った作品をたまに買っていた、、
これからの作家ばかりだったから、それほど値段が張るものはなかったけれども、
入ってくるお金も少ないから、そのうちから陶芸作品を買うのは、なかなか勇気がいることだったのである、、
そんなふうに購入した常滑の陶芸家、加藤真美さんの飯茶碗は、
今の作品からは想像できないようなシンプルな土っぽいもので、
でもとても使いやすくて、以来、ずっと使っていたのだけれども、
キッチンのシンクの中で真っ二つに割れているのを発見してしまったのである、、
どういう塩梅で割れてしまったのか、ちょっとわからないけれども、
上から何かを落としたか、それとも飯茶碗を落としたか、、
仕事の帰り道に、いつも行くところとは違ったスーパーへ立ち寄った、、
卵を購入して、セルフレジのところへ行って、バーコードをピッとしようと思ったけれども、
バーコードが見つからないのである、、ああそういうことね、バーコードのない商品というわけね、と納得して、
そこを検索してみても、卵は載っていないのである、、
じゃあ、バーコードがあるということか、と、もう一度、たまごをじっくりと眺めてみたけれども、
やっぱりどこにもバーコードはないのである、、
これはもうスーパーの人に聞くしかないと思って、、近くにいた店員らしき女性に声をかけようとした、
まさにその時、隣のセルフレジのおばさんが、
怖い顔をして、ぼくの購入しようとしていた卵の側面を無言で指さしたのである、、、
その側面を見てみると、ちゃんとバーコードがあるのである、、
ぼくは、その隣の怖い顔をしたおばさんに、ありがとうございます、と頭を下げた、、
おそらく、おばさんは、となりでモタモタしているおっさんがいるなということを目の端で捉えて、
このバカ、という感じで、そこにバーコード、あるだろ、このウスノロ、と、
心のなかで思っていて、ふん、という感じで指で教えてくれたのである、、
顔は怖いけど、やさしいおばさんである、、
最近知ったことだが、卵かけご飯を安全に食べられるのは日本だけだということらしい、
どうやら、海外の卵の殻には菌がたくさんついていて、生で食するとほぼ確実に腹を壊すというのである、、
しかし、日本の場合は、完全に殺菌してから出荷するため、生で食べても大丈夫ということのようだ、
まあ、そんなことはどうでもいいのだけれども、
とにかく、卵かけご飯を食べようと思って卵を購入したのはいいのだけれども、
飯茶碗が真っ二つに割れてしまっていることに、あとになって気づいたのである、、
ああ、そういえば、割れてしまったんだ、、、
人間というアホな生き物は、失ってからその大切さに気づくのであった、、
しょうがなから、ちょっと大きめだけれども丼、お椀、小さめの子ども茶碗、
そのうちのどれかで食べるしかないな、、
早いとこ、飯茶碗を探してこないといけないな、、
今度また多治見か瀬戸へ行って見つけてくるか、それとも、加藤真美さんの個展でもないかな、、、
あ、でもあったとしても、加藤さん、もうああいう感じの飯茶碗はつくってないだろうな、、、
ちょっと誰かの個展でものぞいてみるか、、、
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