倉井由紀子さんの仕事    ハセガワトモコ

タイとラオスの織物を守りたい

手織物というのは果てしない工程のもとに生まれます。

綿花を育て、収穫し、糸を紡ぐ、あるいは繭を育て繭玉を煮て絹糸を紡ぐ、それを撚(よ)る、その糸を、植物を醸した汁や木の根を煮出した汁で染める。
染めた糸を整えて経糸(たていと)を整経(せいけい)し、機織り機にかける、横糸を通して一段ずつ織る。
糸が出来上がるまでに半年、その糸が民族特有の色鮮やかな織物に仕立てあがるまでに最低1ヶ月長くて半年かかります。

倉井さんが展示に利用しているラオスの絹糸

(1)
(2)

(1)(2)は、ラオス バーンナヤンの手紡ぎ綿 草木染め
(1)は、紡いだ綿を染める前に繊維の中に色が入りやすいよう糸をたたいているところ。鍋で煮出しているのが草木染の染液

糸はその土地その土地で違うやり方で染められる。材料はチーク(若芽、樹皮)、ビルマカリン(樹皮)、カムセート(リップスティクツリーの種)、ジャックフルーツ(樹皮)、キーレック(葉)、ユーカリ(葉、樹皮)、ラック虫、黒檀の実、マックガバオ(紅露)、マリーゴールド(花)、藍(発酵立て)、水牛を飼っているところの土などなど。
家の周りの山や庭先で、収穫したり刻んだりと大変な手間がかかる。同じ材料を使っても色は微妙に違う。それぞれ親から教えてもらったレシピで染めているが、同じレシピでも雨が多い年、照りの多い年など年によって植物の生育状況が異なれば、色は全く変わってくる

そもそも土地によって、土の㏗(ペーハー)や水の㏗(ペーハー)も違う。ある民族から染めを習っている時、最後に葉っぱを一枚入れたら鮮やかな色に変わったことがあった。先祖から伝わる色を濃くするやり方だとのことだった。まるで手品を見ているようだったという

タイ、ラオスのような、高い技術の手織りの産地はどんどん減っています。
倉井さんは30代でそれを見つけだし、一人で奥地に飛び込んで貪欲に習いました。
習いながらその価値を知り、それとともに生きたいと思いました。
まるで「26年前にタイの織物と結婚したようなもの」だと笑います。
ベビー家具の会社にいた頃「誰かが作ったものを売るのではなく、自分で作ったものを売りたい」と思った倉井さんでしたが、タイ、ラオスの織物に出会って「自分たちで作ったものを売りたい」にたどり着いたのです。
倉井さんがプロデュースした洋服は東海地方を中心に様々なギャラリーで購入することができます。

2024年11月久しぶりにピージュウを訪ねた由紀子さん サコンナコン バーナンディ村にて


次の個展の情報はStudio BunrinのInstagramで確認できます。

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