毎日がハイクデイ その6

 いつもの美しいmayuzoさんの書と違って、雑で稚拙な二人の文字。ぼく、こいであさおとその息子である。最初がぼくで、次が息子19歳。大野さんの俳句に失礼な気もしたが、いろんな人が生きているという意味を込めて、あえて書いた。中村正義、山下菊二、星野真吾、佐熊桂一郎、田島征三といった画家たちが、どのような絵を描いてきたか、ちょっと検索してみてほしい。若き大野さんが、思いつめたまなざしで、これらの絵をじっと見つめている姿が浮かんでくるはずだ。

 人人展(ひとひとてん)への初出品から数えて、今年で三十八年。思い起こせば、強く記憶に残る出来事があって、感慨深いものがある。
 一九七四年、日展を頂点とする画壇のヒエラルキーに反旗をひるがえし、中村正義ら七人の画家によって人人展が立ち上げられた。そのニュースは、若かった当時の私の耳にも衝撃的に伝えられた。元より憧れの七人の画家。どうしても彼らに私の絵を見てもらいたいと思った。日本画廊での個展は、その為だったが、私の期待通り、山下菊二、星野真吾、佐熊桂一郎、田島征三が揃って画廊にやって来た時には、正直身が震えた。特に私の目に焼き付いているのは、筋萎縮症の身を押して、一歩一歩画廊の階段を登って来る山下菊二の姿。批評は辛口だったが、評を得た事は今でも私の誇りだ。「君の絵に神経を感じる。」とは、星野真吾からの言葉。これらを支えに、やっとここまで辿り着くことが出来た。

 昨今は讃岐風の腰の強いうどんが好まれるようだが、私は関西風やわらかうどんが好み。喉越しよりも舌触りの良さが旨いうどんの決め手だと思う。柳ケ瀬の「田毎(たごと)」は、私が長年通い詰めた贔屓の店で、注文はいつも鍋焼きうどん。たまに食べる味噌煮込みうどんのファンも多く、どちらも出汁の滲みたやわらか麺だ。この地方には、味噌煮込みは「山本屋」だがねと譲らぬ向きもおいでだが、こちらは別物と思っている。勿論、味噌煮込みがご当地うどんの王者であることに異論は無いが、たとえばベンツがドイツ車のトップにして、野暮。BMWをさらりと乗りこなすのが粋(いき)であるように、それはうどん文化にも当てはまるのではないか。王者の味噌煮込みより、少し控え目な鍋焼きうどんの方に、私はシンパシーを感じてしまう。その「田毎」も平成二十九年、惜しまれながら店を閉じた。

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